近年、アロマテラピーはその手軽さからサロンだけではなく、自宅でアロマテラピーを楽しむ人が増えています。
しかし、なぜアロマの香りが心身に良い影響を与えるのか?
その理由や仕組み、メカニズムを詳しく理解していない人も多く、分からずに使用している人も多いかと思います。
そこで、この記事ではアロマ精油の吸入や芳香浴が心身に効く理由と仕組みを、科学的な根拠に基づいて分かりやすく解説します。
- 香りによって、脳やホルモンにどのような変化が起こるのか?
- そしてどのように心身の不調を改善するのか?
などについて詳しくお伝えしていきます。
アロマ精油の香りに包まれて心身ともにリフレッシュしたい方や、自然の力で健康的な生活を送りたい方はぜひ今回の記事も最後までご覧ください。
精油が呼吸器から入って身体に働きかける仕組み
アロマ精油の「芳香浴」や「吸入」は呼吸器から精油を吸収させる方法で、アロマテラピーの効果をいち早く感じるお手軽な方法。
「芳香」と「吸入」と言う言葉から、ただ香るだけと言う印象をもつかもしれませんが、鼻から入った芳香成分は無意識下にも働きかけるため心身へ大きく作用します。
精油の芳香成分は揮発性が高く、アロマ精油はビンから滴下した時から蒸発していきますが、
空気中に拡散した芳香分子は呼吸によって鼻粘膜、肺へと取り込まれていきます。
その精油の芳香分子が呼吸から吸収されるのは、それぞれ鼻粘膜と肺の2つルートによって体内に取り込まれていくため、どのように吸収していくのかを下記にて説明していきます。
芳香浴
吸入法
ちなみに、精油をお部屋などに拡散して香りを楽しむ方法が「芳香浴」で、ティッシュペーパー、ハンカチなどに精油をつけて精油成分を積極的に吸いこむ方法を「吸入」と言います。
ルート①鼻粘膜【鼻から脳へ】
ここからの説明はやや専門的になってしまうかもしれませんが、
アロマ精油が身体に有効な理由を理解するうえで大切なところなので、アロマを使用していくならぜひとも知っておいてほしい知識です。
精油の芳香成分が身体に取り込まれる流れ
呼吸によって鼻の穴から吸い込まれた精油の芳香分子は、まず鼻腔の内側奥にある嗅上皮というところに到達します。
嗅上皮には香りを認識する1000~5000万個もの嗅神経細胞が存在し、
嗅神経細胞の表面からは、精油の芳香成分と結合するレセプター(受容体)をもった数本の嗅毛が突出しているため、精油の芳香成分とレセプターの結合が刺激となり、
刺激となった嗅毛の内部では次々に複雑な反応が起こり、芳香分子はインパルスと呼ばれる電気的な信号、いうなれば香りの信号を発生させるのです。
香り信号は嗅神経細胞から脳につながる軸索を伝って脳の嗅球に送信され、脳の大脳辺縁系を経て視床下部に到着します。
視床下部への刺激が心身に良い変化を及ぼす
視床下部を例えていうなら、視床下部はコンピューターの中枢部分にあたる重要なところ。
私たちの体には、
①血管や内臓の働きを調整する「自律神経系」
②体の機能がスムーズに働くように調節する物質、ホルモンの分泌にかかわる「内分泌系」
③体をウイルスや細菌などから守る「免疫系」
上記のシステムがあり、これらを合わせて恒常性維持調節機構(こうじょうせいいじちょうせつきこう)と呼びます。
恒常性維持調節機構は、暑さ寒さなど外気の変化をはじめとして、さまざまな環境の変化に対して体がいつも安定した状態を保てるように、体内のあらゆる器官の活動を調節しています。
視床下部は、この恒常性維持調節機構の働きを統括する器官でありリーダーなのです。
自律神経系、内分泌系、免疫系のシステムはかなりタフにできているため、ちょっとやそっとで音をあげることはありませんが、
以前の「アロマテラピーとストレス」の記事でもお伝えしたように、
家族や友人恋人との離別、ケガや病気、事故などで強いストレス状態が長期に続くと視床下部の働きが低下し、それにつれてシステムもうまく作動しなくなります。
体の安定を維持していたシステムが破綻すると、心身はともに変調をきたし、不眠症やイライラ、胃潰瘍、肌荒れ、腰痛、頭痛などなど、あらゆる身体の不快症状が現れてしまうのです。
先の香り信号に話を戻しますが、鼻粘膜を通って視床下部に到達した香り信号(芳香成分)は視床下部を刺激し、働きの落ちているシステム(自律神経系、内分泌系、免疫系の働き)を再度立ち上げるように働くのです。
そして、恒常性維持調節機構が回復すると、体は再び安定した状態を取り戻すことができます。
甘酸っぱい柑橘系や花の香りを嗅ぐとリラックスできたり、刺激的なペパーミントの香りを嗅ぐとシャキッとしたりするのは、香りの芳香成分が電気信号に変換されて脳に伝達されるからです。
頭で考えるよりも先に心身は勝手に反応する
呼吸によってアロマ精油の芳香成分が体内に取り込まれる流れを簡単にまとめると、
鼻から脳へ香りを感じるしくみ
呼吸⇛鼻腔⇛嗅上皮⇛嗅細胞⇛嗅神経⇛大脳辺縁系(嗅球、嗅索、扁桃体、海馬含む)⇛視床下部⇛下垂体or大脳新皮質
このように、香り成分は鼻の奥から入りこんで電気信号に変化し、
本能活動や記憶感情の中枢である大脳辺縁系に伝わり、すぐさま視床下部に伝わって内分泌系(ホルモン分泌)や自律神経系に指示を与えてから、理性のある大脳新皮質へと伝わるため、
芳香浴や吸入は考えるよりも先に心身に対して変化を及ぼします。
大脳辺縁系に入ることで微細な感情の変化が起き、視床下部がホルモン分泌や自律神経系、免疫系などの働きに影響を与えて、そのあと最後に香りを理性的に感じとるのです。
香りを感じて頭で考える前に、自律神経系やホルモンを分泌する内分泌系たちはすでに動きだしてるんです。
嗅覚は本能なので、香りを上手に扱うことで自分自身をしっかりコントロールできるかもしれませんね。
ルート②肺胞【肺から血液へ】
呼吸器を介するもう一つのルートは、芳香分子が気道を経て、肺胞に取り込まれて血液に入っていくというものです。
精油を吸入すると、約5分後には血中に精油の成分が出現することがわかっているのですが、
「ラベンダーの香りを嗅ぐと気持ちが落ち着く」などというのも、精油成分が血中に入り短時間のうちに脳に作用して導かれた結果です
肺から取り込まれた精油は代謝されるのも早く、成分によって違いはありますが、わずか7~8分で体外に排泄されてしまいます。
鼻粘膜からのルートは脳に対して即座に働き、肺からのルートは少し出遅れるものの、わずか数分で血中に成分が入りこんで心身へ作用して効果を発揮します。
鼻からの吸収と肺からの吸収、なんだか一石二鳥な気になりますね。
こうした吸入や芳香浴のメリットは、精油の薬効成分を速やかに体内に取り込める点と、好きな香りを嗅ぐことでリラックスできる点です。
そのうえ、吸入や芳香浴は手軽でありながら香りの効用は心身両面に及ぼします。
アロマ精油の吸入や芳香浴の基本的なやり方と注意点
吸入や芳香浴を家庭で行う場合には、
ティッシュペーパーに精油を直接垂らして含ませたり、“ぬるま湯”を張った洗面器に精油を2~3滴落として香らせておくなど、
手軽な方法でもじゅうぶんな効果を得ることができます。
注意点①熱湯は使わない
ここで注意してほしいのが、お湯に精油を落とす場合は熱湯は用いないこと。
理由として、熱湯はヤケドの原因になるだけでなく、精油の成分が高熱によって変性してしまうからです。
そして、同じ理由からロウソクの火で精油を加熱するアロマポットなども、子どもがいる家庭では火事の恐れもあって危険なので控えたほうがいいです。
そのため、器具を使って芳香浴をする場合は「アロマディフューザー」と呼ばれる電動式の芳香拡散器が最も効果的で、熱を使わず空気中に精油を効率よく拡散させることができるため手軽で安全。
アロマショップやネット通販などで入手可能です。
注意点②吸入の仕方に気を付ける
また、吸入方では精油の種類によって、いきなり吸入するとむせてしまう場合があるため、
蒸気を扱う場合は洗面器から5回ほど顔を離して呼吸しましょう。
注意点③使用頻度と換気
さらに、いくら好きな香りだからといって1日中部屋に香りを漂わせていると、疲労感や頭痛を起こすことがあるため、
芳香浴や吸入(特に吸入)は朝昼夕それぞれ15分くらいが適当で、 1日に使用する精油は芳香浴では10滴までとし、ときどき換気してください。
ティッシュペーパーやハンカチに2~3滴の精油を落として香りをかいだり、そのまま部屋に置いておく。
また、ぬるま湯を張った洗面器に精油を2~3滴落として香らせておくなどの手軽な方法でもじゅうぶんに効果が得られます。
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