平均寿命が延びる一方、少子化が進む現代ではいかに健康を維持しながら年齢を重ねられるかという「健康寿命」ますます重要になってきました。
「アロマテラピーと高齢者」
- 高齢社会の健康と高齢化の実状
- 高齢者によくみられる症状と兆候
- 日常でできる予防と対策方法
- 嗅覚と加齢の関係
- 家庭でできるアロマテラピーレシピ
今回は「アロマテラピーと高齢者」と言うタイトルで気をつけたい兆候と対策、さらには高齢者のケアでアロマテラピーができることについてお伝えしています。
元気に年を重ねる鍵は、健康管理と嗅覚にあり
いよいよ本格的な超高齢社会を迎えている日本。
総人口に占める高齢者(65歳以上)人口の割合の推移をみてみると、1950年(4.9%)から以降一貫して上昇が 続き、1985年には10%、2005年には20%を超え、2015年は26.8%、そして現在の2023年には29.1%と過去最高を更新し、
2040年には65歳以上の人口が全人口の約35%となると推計されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21481.html
また、55歳以上の独居または夫婦のみの世帯数も増加傾向にあり、高齢者同士でケアをし合うことも珍しくない状況となっています。
日々の健康をキー プしながら年を重ねることは、今や重要かつ緊急の課題であるため、家庭でできる病気の兆候の見分け方や対策を知ることが大切。
近年では高齢者のケアにアロマテラピーを活用している研究や事例が報告されています。
香りのリラックス作用をはじめとした嗅覚を刺激することによる大きなメリット等を、最新の研究結果をもとに、家庭でできるアロマテラピーレシピも活用して疾病罹患や重症化の予防、健康維持に役立てましょう。
アロマに迷ったらこれで解決!
家庭でできるアロマテラピーの
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高齢者の健康と実情
日本は世界有数の長寿国ですが、長寿=健康と言えるのでしょうか?
高齢者の健康意識や実状について。
ただの寿命ではない、「健康寿命」を延ばすことが重要
医療の進歩や健康意識の高まりに伴い、日本人の平均寿命は年々延びる傾向にあるものの、
健康上の問題がない状態で日常生活を送れる「健康寿命」 とは約10年の開きがあり、元気なまま生涯を終えるのは難しいのが現状。
このデータを裏付けるかのように、実際の医療現場においても、70歳を過ぎたあたりから慢性化した症状で来院する方が増えてくるのだそう。
どちらも慢性・重症化しがち
特に、整形外科の症状(腰痛、肩こり、膝の痛みなど)と高血圧は、現代の高齢者の二大疾病と言っても過言ではないほど多く見られ、日常生活に支障をきたすという点が厄介といえます。
65歳以上の2人に1人
持病や体力の衰えに不安を感じている
こうしたデータもあるため、加齢に伴う体力低下や不調は避けて通れないことであっても、毎日のケアなどで、体力低下や不調の慢性・ 重症化を予防したり、衰えるスピードを緩めたりすることは健康寿命を伸ばすうえでもキーポイントとなります。
健康寿命を伸ばせば医療負担が楽になる
現在、65歳以上の一人あたりの医療費は55歳未満の約4倍で、75歳以上では約5倍と言われています。
この差をなるべく少なくすることが、身体と金銭、両方の負担減につながります。
自分らしく楽しい老後を過ごすには、 身体について医療機関に任せっ ぱなし、頼りきったりするのではなく、日常的に対策を取り入れて健康寿命を延ばすことが重要といえるでしょう。
よく見られる症状と兆候
高齢になって病気やケガをすると、なかなか治りにくく後遺症が残る心配も。
よく見られる症状や兆候を知ることで、大きな病気やケガを予防しましょう。
体力低下、視力低下、 浅い眠りに要注意
年齢を重ねるにつれ、体力が低下したり感覚が鈍くなったりするのは当然にあることですが、なかでも気をつけたいことが3つあります。
年を重ねるごとに気になるアレコレ
筋力の低下
視力の低下
眠りの浅さ
これらは大きな病気やケガにつながりかねないという点で注意が必要な変化なのです。
高齢者の筋力の低下におけるロコモティブシンドローム
筋力の低下についてはある程度は避けられませんが、かといって運動不足のまま放っておくと「ロコモティブ・シンドローム(ロコモ)」を招いてしまうことが往々にしてあります。
ロコモとは、骨や関節、筋肉といった身体を支えて動かす役割をする器官の障害により、要介護のリスクが高い状態になること。
また、自覚症状がないまま進行していく怖い症状であり、家の中でつまずいたり滑ったりする、15分続けて歩けない…等の弊害があり、布団の上げ下ろしなど、やや負荷の高い家事が困難といった兆候が見えたら…
ロコモの疑いがあるので医師にチェックしてもらった方が懸命です!
高齢者における感覚機能低下や認知症
視力の低下や眠りの浅さはどちらも転倒につながる危険があるという点で注意が必要ですが、
ただ、本人も周囲も気づきやすい症状であるため、比較的早めの対策が取りやすいといえます。
そのため、高齢者の掃除後にゴミやほこりを見つけたり、高齢者が朝からだるそうにすることが続く場合は、医師の診断をあおぐこと。
高齢者は睡眠が浅く短くなりがちですが、頭がぼーっとしたり、身体がだるかったりなどの自覚症状がなければ、特に問題はないとされています。 ちなみに
最近増えた、気になる様子
- 食欲がなくなる
- 突然機嫌が悪くなる
- 引きこもりがちになる
- 聴覚低下
上記の様子が増えた場合は、「認知症」が潜む可能性や、それに伴う「鬱」に加え、ろれつが回りにくくなった、よく物を落とすというような場合は「脳の病気」などが考えられるので、こうした兆候に気づいたらすぐに医療機関へ相談をしてください。
複数の症状や不調があるときは、総合診療科を訪ねるのも手ですので、早めの受診で早期発見と治療に努めましょう。
健康寿命を伸ばすため、日常でできる予防と対策方法
病気やケガ、あるいは持病の重症化を防ぐために、日頃からできることは多いもの。 継続が大切なので、無理をしない範囲で取り組んでみましょう。
住宅内での事故を減らす工夫が何より大事
高齢者にとって絶対避けたいことのひとつが転倒。
転倒によるちょっとした打撲も骨折などの重傷になりかねず、安静が必要な状態になれば、運動することもできずに心身の機能が著しく低下し、寝たきりや要介護のリスクが格段に高まります。
これを防ぐには、まずは家の中から転びやすいものをなくすことが大切
居住スペースのバリアフリー化
家の中は気が抜けるため、廊下での転倒や階段での転倒という話はお客様からもよく耳にします。
スリッパをやめて、足本来の動きを妨げない履き物を選ぶだけで、転倒リスクはかなり減らせます。
また、 高齢者にとっては絨毯の毛足や床との段差は思った以上に負担になるため、段差があるものもできるだけ避けましょう。
また、見落とされがちなのが脱衣所の足ふきマット。滑りやすい浴室を出て気を抜いたところで転ぶケースも増えつつあります。
ほかにも転びやすくなるものがないか、あらためて家の中を見直してみるのもよいでしょう。
食欲の有無と軽い運動の必要性
食欲はありますか?
食欲があるかどうかは常にチェックが必要であり、食欲の低下にはさまざまな病気が隠れていることが多いうえに、筋力の低下を引き起こします。
あとは、体力や筋肉量の維持のために適度な運動も大切です。
特に、下半身の筋肉は衰えやすいので、スクワットや太極拳、軽めのシニアヨガなどで適度な刺激を与えましょう。
ゆったりした動きのシニアヨガで健康維持
実は、15年前と比べて高齢者の体力は向上しています。
これは、年を重ねても筋肉が鍛えられる証拠であるため、適度な負荷の運動を日常に取り入れ、健康維持に励みましょう。
アロマテラピーは高齢者にも効果あり、加齢と嗅覚の関係
加齢と五感、なかでも嗅覚とはどのような関係があるのでしょうか。
精油が高齢者の嗅覚に与える影響も含めて解説します。
加齢による嗅覚の低下が注目されつつある理由
体力や筋力と同様、加齢によって五感の感度も低下します。
もちろん、嗅覚も例外ではなく、閾値・識別・同定という3つの視点から嗅覚の能力を測定したところ、60歳以上で閲値の上昇と識別・同定の低下が見られる というデータがあります。
これまで嗅覚の低下が問題視されることは少なかったのですが、最近では重要な問題として注目されつつあります。
アロマ精油で嗅覚トレーニング
嗅覚は認知症の発症や重症化の予防に関係あり
ひとつ目の理由は、認知症の発症や重症化の予防と嗅覚の関係が知られるようになったこと。
もうひとつは、嗅覚は味覚と密接な関わりを持つため、嗅覚低下により食事をおいしいと感じにくくなり、食事量の減少を招くということです。
これにより、筋肉量が減少するサルコペニア症の危険が高まり、ロコモティブ・シンドロームへの近道とな ってしまいます。
このように健康な老後を過ごすには、嗅覚が重要な役割を果たすのです。
その一方で、年齢が高くなると香りを好ましく感じるようになるという研究もされています。
嗅覚の能力は低下しますが、香りは高齢者に楽しみや喜びを感じさせてくれるのです。
こうした加齢と嗅覚の関係から、アロマテラピーを活用して、高齢者の健康に好影響を与える研究が進められています。
ブラックペッパーの香りが
嚥下反射を誘発
そのひとつとして、「ブラックペッパーの香りによる嚥下反射の誘発」の研究報告があります。
ブラックペッパー精油の香りを嗅ぐことで、嚥下反射をスムーズにする神経内物質、サブスタンスPの血液中濃度が上昇することが報告されました。
嗅神経のブラックペッパー嗅覚受容体への刺激が、大脳皮質を介してサブスタンスPを放出させ、嚥下反射を改善するという仕組みです。
日本人の死因3位は肺炎で、なかでも高齢者の肺炎はほぼ誤嚥性肺炎といわれています。
だからこそ、ブラックペッパーの香りによる誤嚥の子防が期待されているのです。
個人差はあるものの、香りを嗅ぎ始めて2週間~1ヵ月で変化が見られるようです。
認知症で口の中に溜め込みを行う状態だった高齢者が、ブラックペッパー精油の香りを1カ月間嗅いだ結果、9割を飲み込むようになった例も報告されています。
嗅神経は成人の脳神経では珍しく、再生が期待できる神経でです。
高齢者の嗅覚にも適度な刺激を与えることが嗅覚の低下を防ぎ、健康維持にも役立つといえるでしょう。
アロマ精油で飲み込む力をサポート
健康寿命を伸ばすために家庭でできるアロマテラピーのレシピと使い方
ここからは、高齢者はもちろん、ケアする人の気分転換やリフレッシュにもつながる、 家庭で簡単にできるアロマテラピーのレシピをご紹介します。
気分や目的に合わるアロマ精油を使った芳香浴
まずは、気持ちを明るくする、 落ち着かせる、消臭やもの忘れ防止など、その日の気分や目的によって下記に記載している精油などを参考にしてください。
香りを楽しむ方法は簡単で、部屋全体に香らせたい時はディフューザーがとても便利。
無印のディフューザーがイチオシ
枕元や玄関などの狭い範囲なら、ティッシュやお湯を張ったマグカップに数滴垂らすだけで手軽に楽しめます。
また、精油を無水エタノールに溶かして精製水で希釈してスプレーを作り、カーテンやソファ、エプロンなどにシュッとひと吹きするだけで爽やかな香りが広がり、居心地のよい空間づくりもできます。
シーン別 おすすめのアロマ精油とブレンド
ここからは、シーン別におすすめの精油、ブレンドをご紹介!
お気に入りのアロマを見つけてみて下さい。
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- 明るい気持ちになりたい時
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ラベンダー 1滴+レモングラス 2滴
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- 抗菌作用の期待もできる
ティートリー 1滴+レモン 3滴
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- リフレッシュしたい時
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ユーカリ 1滴+レモン 3滴
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- 蒸し暑くてスッキリしたい時
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ペパーミント 1滴+レモングラス 1滴
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- 物忘れの予防「昼」
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ローズマリー 2滴+レモン 1滴
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- 物忘れの予防「夜」
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オレンジスイート 1滴+ラベンダー 2滴
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- 食欲がわかず、元気になりたいとき
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ラベンダー 1滴+グレープフルーツ 2滴
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- ゆったりとした気持ちになれる
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ゼラニウム 1滴+レモン 2滴
香り+肌への作用がある足浴や沐浴
肌への作用が比較的おだやかな精油を選べば芳香浴はもちろんのこと、手浴や足浴、入浴にも活用できます。
手浴や足浴は1~2滴、 浴槽の場合は5滴以下の精油を垂らし、よくかき混ぜてから浸かるようにしましょう。
また、精油が0.5~1%以下の濃度になるように植物油に混ぜたトリートメントオイルもおすすめ。
やさしく皮膚に塗布すれば、香りとタッチングの作用で、ケアする人もされた人も深いリラックスを得られます。
おすすめのブレンド精油
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- 部分浴や入浴、おなかのケアにおすすめ
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スイートマジョラム 1滴
+
ラベンダー 2滴
あとがき
今回は、「アロマテラピーと高齢者」のテーマで、日ごろから気をつけたいこと、家庭でできるアロマテラピーのおすすめのブレンドについて、ご紹介しました。
香りのちからを上手く活用し、たのしみながら健康維持ができれば良いですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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